◆ 2011年 8月 薄氷 昨年に続く猛暑です。 夏と言えば「氷」ですね。。。 今の時代だからこそ冷蔵庫を開けると勝手に氷が出来ていて、誰もが口にできるものですが、その昔には貴族のみが食することの出来る貴重品でした。 山陰に穴を掘って作った「氷室」に冬の氷を蓄えて、陰暦の6月1日に宮中や幕府に献上する儀式もあったようです。 庶民には手の届かぬ物だったのですね。 話は余談になりますが… 節電の今夏、この氷室が見直されているそうです。 豪雪地帯では家の裏に雪を蓄えた氷室を作り、農作物の保存に使っていたそうです。 その氷室の中の冷気を循環させて家の中に冷房として取り込むお宅が急増しているのだそうです。 冬場、溶かしたり流したり… 除雪によって出る厄介者の大量の雪を貯蔵し、夏の冷房として利用する取り組みが進められているそうです。 和菓子の世界で「氷」をイメージさせる形は三角です。 例えば6月の「水無月」も氷を表現したものだと以前にも書きました。 琥珀羹の中にも三角にカットして「氷」を表したものがあります。 一見、氷砂糖のようにも見える琥珀糖にも、まさに色や形で「氷」を表現するものが見られます。
私が、「氷」のお菓子で忘れられないのが富山の銘菓「薄氷」です。 私が子供の頃、父が(多分、お茶かお花のお仲間の先生から)頂いて来て、とても大事そうに箱から取り出し1枚だけくれるのです。 父が「わざわざ富山から買って来て頂きました。 古くは献上品として使われていました…」 と社中のお姉さんたちに説明しているのを聞き… 子供心に“貴重品”なのだと感じ、薄い綿に挟まれきれいに並べて木の箱に 大切に納められたそのお菓子を見て、「きっともの凄く高いお菓子なのだろう」と、「もう一枚、食べたい」と言えなかった事だけを鮮明に覚えているのです。(笑) 私が子供の頃は今ほど輸送の状態が良くなくて、きっと発送は不可だったのでしょうね。 お箱は確かに木の箱だったと思うのですが… そしてもっと真っ白いお菓子だと思っていたのですが… 何分、随分と古の話です! (苦笑) 薄く張った氷がパリンと割れたようなイメージの… 薄い 薄い麩焼き煎餅を2枚併せて表面に和三盆の蜜を引いた変形の四角い「薄氷」は、思い出の深い懐かしいお菓子です。
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