和菓子のお教室をはじめさせて頂いて早や13年になります。
たくさんの美味しいお菓子、珍しいお菓子に出会いました。
そんなお菓子の思い出やエピソードを、少し… お話したいと思います。

 

◆ 2011年 6月  嘉祥菓子

6月16日が『和菓子の日』とされていることをご存知でしょうか?
その起源は平安時代中期(承和年間)に疫病が蔓延した為、仁明天皇が年号を嘉祥と改め、その元年6月16日に16個の菓子や餅を神前に供えて疫病除け、健康招福を祈願したことに因みます。 おそらく季節的に食べ物が腐敗し、食中毒など起こしやすくなる… この季節に厄除けを行ったのでしょうね。 さらに民間には室町時代から江戸時代(明治のはじめ)まで、陰暦6月16日に行われる年間行事として 「嘉祥食(かじょうぐい)」がありました。

嘉祥は嘉定とも書くそうで、この日に銭十六文(由来の一説では宋の嘉祥定通宝16枚)で菓子を買って食べると、その家に福があり、疫病を免れると言われたそうです。 宮中や幕府では16種類の菓子や餅を用い、「家康は駿河城で盛大な嘉祥の儀を行った」とか、「徳川幕府では、この日、大広間で菓子が振舞われた」とか、様々なエピソードが残っています。 が、数や種類に約束はなかったようですね。 後に16を1と6に分け、1+6で7種の菓子を用いるようになりました。 民間では銭十六文、米1升六合で、餅16個を買い、それを無言で食する風習があったようです。

明治以降、「嘉祥の儀」は見られなくなります。 宮中出入りであった虎屋さんが「嘉祥菓子」を再現しておられます。 その記録によると《いかもち、桔梗餅、豊岡の里、源氏まぜ、武蔵野、浅路飴、味噌松風》の7種だそうです。 「来年こそは、来年こそは!」と思いつつ… 機を逃し、残念ながら私も未だ食べた事がないのですが、 6月10日〜16日 期間限定での販売があるそうですよ。