和菓子のお教室をはじめさせて頂いて早や13年になります。
たくさんの美味しいお菓子、珍しいお菓子に出会いました。
そんなお菓子の思い出やエピソードを、少し… お話したいと思います。

 

◆ 2011年 12月  辻占(つじうら)

今年もまたMさんから『辻占』が届きました! Mさんのご出身は金沢です。 金沢には銘菓がたくさんありますが…  この『辻占』はお正月だけの縁起菓子ということで毎年頂戴し、新年に皆で楽しませて頂いています。

『辻占』は砂糖と餅粉を練り合わせた生地を三片の花形の巾着に絞り、中に小さなおみくじのような和紙の入ったお菓子です。 古く日本には道の辻(角)に立って最初に通る人の会話や言葉から吉凶を判断する「道行き占」という変わった占いあったそうで、それが「辻占売り」という商売に発展し、やがてこの辻占をお煎餅やかりん糖、砂糖菓子に貼り付けて売るようになった。 『辻占』はその名残りなのだそうです。 また、フォーチュン・クッキーの元も、実はこの辻占煎餅なのだそうですよ。

中に小さく丸めて入っている紙札(おみくじ)は「おめでたいもの」「格言めいたもの」「艶っぽいもの」「なぞかけのようなもの」「意味不明のもの」…何種類もあるようです。 「これって、どういう意味?」と、首を傾げたり、笑いを取ったり、思わず苦笑いするものもあります。 本来は元旦に家族で楽しむもので、2〜3個を引いてその文面を並べ併せて一年を占うそうです。

中に時々「えっ?」と思うような意味深な色っぽいものがあるのですが、これは江戸時代この「辻占売り」が遊郭に出入りしていたことや花柳界界隈で商売をしていたからだそうで、『辻占』はやっぱり大人の感覚で楽しむお菓子なのだと納得した次第です。

           

Mさんから頂くのは高砂屋さんのもので、色付けが淡く上品です。 今では数は減ったそうですが何軒ものお店がこの『辻占』を作っておられますし、金沢のお正月には他にも「福徳(ふっとく)」という最中の皮で作った打出の小槌や俵、砂金袋を象ったお菓子があるそうです。 こちらも中に金平糖でできた大黒様や招き猫、縁起の良い土人形などが入っています。 また「福梅」という前田家の家紋である梅の形をした紅白の最中も、お正月には欠かせないとか…。 さすが、金沢も深いですね。