和菓子のお教室をはじめさせて頂いて早や13年になります。
たくさんの美味しいお菓子、珍しいお菓子に出会いました。
そんなお菓子の思い出やエピソードを、少し… お話したいと思います。

 

◆ 2010年 8月  葛切り 

今年の暑さは異常です! こうなると和菓子であれ洋菓子であれ、あえて食べたい!とは思えなくなってきます。 欲するのは、ともかく“冷たいもの”という事になるのでしょう。。。 夏になると皆さんからリクエストとして挙がるのが「葛切り」です。 ツルツルと喉を通り、ヘルシー志向から黒蜜も人気です。 何よりも「葛切り」は出来たてが命ですから… ご家庭で作りたい!というのも尤もな事かも知れません。

そう言えば… もうずい分長いこと鍵善さんの「葛切り」を頂いていません。(苦笑) 注文してからかなりの時間がかかる為、時間的にもお財布の中身も… 余裕のある時にしか伺えません。(笑) 何度も言いますが「葛切り」の信条は“作りたて”です。 「わらび餅」の時にも書きましたが、煉りあげた葛(地下茎の澱粉)は時間の経過と共に劣化(α化)が進みます。 「ご注文をお聞きしてから、お作りします」というのは実に正しい姿で、葛のお菓子はともかく“出来たて”が一番美味しいです。

残念ながら… 皆様のリクエストになかなか応じることが出来ずにいます。 過去にお教室で「葛切り」を行ったのは2回しかありません。 教室で行うには時間と手間、大きな鍋と大きなボール、広い場所が必要なのです。 葛粉と水を溶き面器に流して熱湯の上に浮かべます。 面器の中で葛が固まったら今度は面器ごと冷水に取ります。 ベールのような葛を掬い上げて手早く包丁で切って仕上げます。 この手間を思えばお店で頂く「葛切り」がお高いのも頷けると思います。 

教室では自宅に戻ってから再現できるように、バットや流し缶を使って作りますが正式には葛切り専用の平鍋(写真)があります。 やはり銅製で、持ち手を持って作業を行うのだそうです。 別注品にて「今なら、おひとつだけならお分け出来ますよ」と仰って頂いたのですが、あまりの高額に諦めました。(笑)   

煉りあげた葛は“出来たて”が一番ですが、葛粉そのものは古い方が良いと仰る方も多いです。 9年、10年経ったものの方が良いというのもよく聞くお話です。 元々、葛粉には薬効成分があり、お薬として、保存食として用いられていたことから、そのように言われるのでしょうね。 教室では何年も置いた事がありませんので、真意の程は分かりません。。。