◆ 2010年 7月 錦玉羹 夏、小さい頃にはよく見かけた「錦玉羹」という和菓子、近年、姿を消していると思いませんか? どぎつく鮮やかな色をしていて…まるで宝石のようにキラキラときれいで… 食べるとどうにかなりそうなほど甘い! あの夏のお菓子です。 「錦玉羹」というのは寒天と水を煮溶かし砂糖を加えて煮詰めた液を冷やし固めたものです。 寒天のお菓子の事ですね。 糖度を高くしてやるとあのクリスタルのような輝き、透明感が現れます。 甘みを嫌って加える砂糖を少なくすると残念ながらあのキラキラとした涼しそうなお菓子は出来上がりません。 白く濁ってしまうのです。 例えて言うと「みつ豆」の缶詰の中に入っているサイコロ状の赤や白の寒天です。 「みつ豆」の缶詰の寒天をもの凄く甘い!と思っておられる方は多いでしょう。 あれはみつ(シロップ)が甘いのであって、寒天そのものは大して甘くはないはずです。 大量のお砂糖や水あめを使わなければ、あの美しさは得られないという事です。 「錦玉羹」が敬遠されている理由はいくつかあるのでしょうが、まずはあの強烈な甘さだと思います。 甘さ控え目の今の時代に、到底受け入れられない甘さです。 次に、寒天の食感ではないでしょうか? 寒天特有のコツコツした… あの食感にあると思います。 なめらかプリン! なめらか豆腐! なめらかクリーム! 今は何でも滑らか志向です。 歯にも当たらず「つる〜ん! トロ〜リ!」とした ゼラチンやゲル剤を使った喉ごしの良いものが好まれるようです。 かく言う私も「錦玉羹」(=写真・左)はあまり好みではなく…(苦笑) 夏には好んで「みぞれ羹」(=写真・右)を作ります。 「みぞれ羹」とは「錦玉羹」に道明寺粉を加えたものですが、わずかのもち米が入るだけで口当たりがかなり変わります! 寒天のコツコツ? カツカツ?した食感ではなく少しモチモチした感じです。 私が使うのは極、極、細かい道明寺粉です。 大きな粒の道明寺粉では口の中で寒天とご飯粒が別々のものに感じられ、更に食感が悪く感じられます。(苦笑) あえて加える道明寺粉の粒の大きさを変えたり、大小混ぜたり、色で変化をつけたり、型に流したり型で抜いたり… 「みぞれ」に仕立てるだけで、様々なものが表現できてお菓子の幅がう〜んと広がるから面白いです。 先月末の東京教室でもこの「みぞれ羹」が大好評でした♪ 火の前に立つ時間が短いのも夏には嬉しいですね。 リキュールで香りも…という生徒さんもおられますが、お茶では香りのものを嫌いますから「それはご自由に!」という事にしてあります。(笑)
|