和菓子のお教室をはじめさせて頂いて早や13年になります。
たくさんの美味しいお菓子、珍しいお菓子に出会いました。
そんなお菓子の思い出やエピソードを、少し… お話したいと思います。

 

◆ 2010年 6月  わらび餅 

今月の神戸の和菓子教室は人気の「わらび餅」です。 教室で作るのは中に餡を包んだものですが、一般には“ぷるん”とした生地を切っただけのものもありますね。 昨今はこの“ぷるん”あるいは“とろん”あるいは“つるっ”とした食感 が時代の好みのようです。 「わらび餅」と同様に「葛」や「蓮根」「タピオカ」など地下茎の喉ごしの良い澱粉のお菓子は夏の和菓子の代表ですね。 

                    

街には「本わらび餅」のポスター文字が目立ちます。 極わずかでも「本蕨粉」を使用していれば「本わらび餅」と表記しても良いんですって! 食べ物の表示が厳しくなっている昨今なのに、これには少し驚きました。 引き換えに「粉」の方の表示はキビシイ(当然かな)ようで、蕨の根茎から採取したものを「本蕨粉」と言い、その他の澱粉が混ざったものは単に「わらび粉」あるいは「わらび餅粉」と書かれています。 他の食品と同様に含まれる量の多いものから表示されているはずですから、裏の表記をよ〜く見て買うべきですね。

「本蕨粉」はかなりグレーっぽい色をしています。 その他混ぜ物のしてある「わらび粉」は肌色、白っぽい色ですね。 いずれにしても採取出来る量が非常に少ない国産の「本蕨粉」が、和菓子の材料となる粉の中で最も高価なものではないでしょうか…。 元々「わらび粉」は糊として使用されていたそうですよ。 生の蕨には軽い毒性があり、鹿や馬、羊なども避けて通る山菜なのだそうです。 そうしたものに火を入れて食する、澱粉を取り出して使う事を考えついた人間は偉いですよね。 和菓子の粉のバリエーションの広さと深さには、いつもいつも驚かされます。

                 

わらび粉をはじめ地下茎の澱粉質は火を入れて煉れば煉るほど弾力が出る!と言われています。 よくテレビなどでお店のオジサンが汗をいっぱいかきながら「30〜40分は煉ります」と言っておられるのは、十分に頷けます。 ただ、家庭で作る量を30分も煉ろうものなら焦げてしまって大変です。。。 (笑) また澱粉質のものは出来上がりから時間の経過と共に劣化(α化)してくるので固く?感じられると思います。 作りたてを急冷して頂くのが一番美味しいですね! 

私が一番印象に残っているのは、やはり名古屋の《芳光》さんの「わらび餅」でしょうか…? どうしてあんなに柔らかい漉し餡を包む事ができるのでしょうか? まさか凍らせた餡玉などお使いになるはずもないでしょうし・ ・ ・(笑) いつも名古屋にご縁のある生徒さんから頂くばかりなのですが、10月から6月の期間限定の「わらび餅」 徳川美術館の近くに移転されたとのことで、いつかお店に行って“出来たて”を頂戴してみたいと思っています。