和菓子のお教室をはじめさせて頂いて早や13年になります。
たくさんの美味しいお菓子、珍しいお菓子に出会いました。
そんなお菓子の思い出やエピソードを、少し… お話したいと思います。

 

◆ 2009年 4月  花見団子 

今年は桜の開花が遅く(厳密には開花後に寒の戻りがあり)、桜の花が長く楽しめそうですね。。。  

桜餅はもちろん春の和菓子の代表ですが、他にも桜にちなむお菓子はたくさんあります。 また最近では「さくら○○○」といった和洋折衷のお菓子やデザートも多く見かけます。 桜ほど人々に好まれる花も少ないですね。 今月は「花見団子」についてお話したいと思います。

「花見団子」と言えばきっと皆さんは串に刺さったピンク、白、緑のお団子を想像なさることでしょう。 スーパーやコンビニなどでも見かけます。 ケースの上にはちゃんと「花見団子」のシールが貼ってあります。 ですが、あのお団子を私は単に「三色団子」と呼び、「花見団子」はピンク、緑、茶色(こし餡の色)の三色のこなし製の団子を「花見団子」としています。 

「三色団子」のピンク、白、緑はお雛様の菱餅にも通じますが、大きくは宇宙を表現しています。 ピンク(紅)は天、白は人、緑(青)は地です。 天地人つまり宇宙です。 また季節では紅は春、白は冬、青は夏で、秋が無いのは人生に飽きや空きが無いようにとの教えだそうです。 子供の頃、私はこの「三色団子」が何よりの好物でした。 祖母と市場に行っては必ず市場の中の和菓子店でオネダリをして、1本だけ白い紙袋に入れてもらい持ち帰って頂くのが楽しみでした。 私の好物と知っている祖母が我が家にやって来る時のお土産も、年中この「三色団子」でした。 あの何とも言えない歯切れの良さと甘さ、三色の可愛らしさが大好きでした。

                                       

お茶のお稽古をするようになって出会ったのがピンク、緑、茶色の三色のお団子に仕立てた“こなし”の「花見団子」です。 一串の中に花と葉と木(幹)を表現していると聞き、大いに納得しました。 以後、私の中ではこちらが「花見団子」です。 

団子の文化を辿れば非常に興味深いものがありますが、元来、神仏に捧げられた食べ物のようです。 つまりは祈りや願いが込められたお供物ということです。 秋の「月見団子」や「彼岸団子」がその良い例ですね。 ちなみに今月の教室は「みたらし団子」です。 お馴染みの甘ダレのかかった串団子です。 下鴨神社の御手洗会(みたらしえ)の折に売られたことからこの名がついたと言われています。 一串に5個のお団子がついていて先の一つだけが離れています。 先の一つは頭で、下は体を表しているそうです。 

蛇足ですが… お茶席や他所のお宅で「花見団子」を出された場合には、串を手に持ちかぶりつて… 串を引き抜くなんて事をしてはいけません。 まずは懐紙(お皿)の上で串を抜き(全部です)、抜いたその串を楊枝にして、団子を刺してお召し上がりくださいね。 実際のお花見では、どうぞ大きな口を開けて… 思いっきり… 春を謳歌して下さい!