和菓子のお教室をはじめさせて頂いて早や12年になります。

たくさんの美味しいお菓子、珍しいお菓子に出会いました。

そんなお菓子の思い出やエピソードを、少し… お話したいと思います。

 

◆ 2009年 3月  いちご大福 

今月の神戸の和菓子は「いちご大福」です。 東京でも神戸でもリクエストがとても多いお菓子です。 “元祖”を名乗るお店が全国に何軒もあり、どこが発祥なのかは未だに謎ですね。 いずれにしても、決して歴史は古くはありませんよね。。。  

教室でも毎回お話しますが、私は随分長くこの「いちご大福」に手が出せませんでした。 つまり「いちごはイチゴとして食べるのが、美味しいでしょう? 何も大福の中に詰めなくても・・・」派でした。 普段いただくイチゴでさえ、砂糖やミルクをかける事もしませんから(笑)、あえて「いちご大福」を食べよう!食べたい!とは決して思えませんでした。 あまりにも生徒さんからのリクエストが多く、「桜餅」と並び春のお菓子の王道を行くようになり、無視できない存在となりました。

「大福」というお菓子は本来「餅」です。 餅米を洗って水に浸し、蒸してから杵で搗く。 搗きあがった「餅」の中に餡を詰めたお菓子が「大福」です。 ですから皮(餅)には甘味がありません。 皆さんも買ってきた「大福」の皮(餅)がすぐに硬くなったり、翌日にはチン!したり焼いたりして召し上がられた経験がありませんか? また、翌日になると皮(餅)が割れて中から餡が出てきていた!なんて事も。 これは外と中の糖度の差によって起こる現象です。 

「いちご大福」は「大福」と名のつくお菓子ですが、外の皮は「餅」ではなく、おそらく「求肥」だと思います。 「求肥」は粉(餅粉や白玉粉)から作り、生地に砂糖が加わります。 砂糖は単なる甘味だけではなく水分でもあり、量によっては防腐の意味もあり、生地を柔らかくキープする役目もあります。 イチゴというデリケートな中身には、当然、柔らかで滑らかな「求肥」の方が向いていると思います。 (笑)

余談ですが… 「豆大福」も東京ではリクエストの多いお菓子です。 こちらは断然「餅」で仕上げるべきだと思います。 塩味に仕立てた赤えんどう豆を混ぜるには、「餅」の粘りが必要だと思いますね。  

「いちご大福」の美味しさは、やはりイチゴで決まるように思います。 私の個人的好みですが少し酸味のあるイチゴの方が美味しいように思います。 イチゴとも思えない「ももいちご」や今の主流の「あまおう」などを使って、贅沢を売りにしている「いちご大福」も見かけますが、大きさの点からもイマイチ…かしら?と、思いました。 今やイチゴにとどまらずバナナやキウィ、アンズ、巨峰、ブルーベリーなどフルーツを使った「大福」のバリエーションは様々あります。 いずれも水気の少ない、少々甘酸っぱい果物のような気がするのですが如何でしょう? 

イチゴを巻く餡ですが、元々は漉し餡。 その後、見た目の美しさから白餡が登場したと聞いています。 お店によって其々のようですが漉し餡、粒あん、白餡… 何を使っても大差は無いように思います。 教室ではアレンジで黄味餡を使います。 ちょっぴりカスタードを意識して… 見た目の可愛らしさからも白餡にひと手間♪です。

「いちご大福」… 年齢が下がるほど“大好き派”が増え、私より年上の生徒さんは私よりさらに「イチゴはイチゴ、大福は大福」といった先入観が強いらしく“NG派”がほとんどです。 好き嫌いがはっきり二分される面白い和菓子です。